ふとTwitterのTLを見ていると、Adobeアプリ(Creative Cloud・Creative Suite)の古いバージョンのインストーラーがダウンロードできない的なツイートが流れてきました。
またいつものように一時的なトラブルなのかななどと思って、スルーしていたら今度はFacebookで、ヤバい的な書き込みがあったので調べてみたら、Creative Cloudを契約している上で本当にヤバいことになっていました。
先に、結論を書いてしまいますが、Adobe CCを契約していても、CCの好きなバージョンが使えるわけではなく、Adobeが認めた最新版に近いバージョンだけが使えますという方針に変わったようです。
事前の予告もなく、このような方針転換は運用の面で問題ではないでしょうか。
Adobe CCの古いバージョンは使用禁止!?
— 笹川純一@元DTPオペ (@jdash2000) May 9, 2019
別ページでは『アドビでは、一部のアプリケーションの古いバージョンを非認定とし、使用を認めていません。』とも。なかなか強気だ。
印刷業界は頭を抱えるだろうが、そんな業界のことは関係ないのだろう。https://t.co/nL6YfVnQIO
公式ドキュメントにはこう書いてある
まずは公式のドキュメントを確認しておきます。一次資料に当たることは大事です。
Creative Cloudのダウンロード可能なバージョンの変更につきましてお知らせいたします。Creative Cloudの最新版へのアップデートがお済みでない場合、一部の旧バージョンのアプリケーションを使用したり、それらのバージョンを含むパッケージをインストールすることができなくなります。
アドビ
ここだけ読むと、とりあえず最新版を入れておけば、古いバージョンの使用やインストールはできると読めるのですが、実際は違うようです。
以下の表に記載されている認定外の製品のご使用を中止していただき、認定されているバージョンへのアップデートをお願いいたします。
アドビ
つまり、認定しているバージョン以外は使用禁止ということです。
以下の表には何が書いてあるのかというと、こんな感じでした。
※Illustratorが抜けているようですが、単なるミスだと思われます。
別に古いバージョンをそのまま使っても問題ないのでは…?と思いますよね。このページには以下のように古いバージョンを使うと訴えられる可能性があるという恐ろしいことも書いてあるのです。
Creative Cloudの認定外のバージョンの使用またはインストールを継続した場合、第三者に権利侵害を主張される可能性がありますのでご留意ください。
アドビ
この権利侵害の件は、古いバージョンに共通したコア技術の他社からのライセンス提供期間が終わったのか、技術をライセンスしてもらっていた会社の方針が、例えば買収や経営陣の交代などで変更になり、アクティブ数に応じた、もしくはインストール数に応じたライセンスフィーを求めるようになってきたなどのことが考えられますが、実際のところ、詳しい話はわかりません。
本当にCS6がインストールできないのか
私が使っているWindows PCは最新版のAdobe CCアプリしかインストールされていないので、CCDA(Creative Cloud Desktop Application)を開いて、CS6のバージョンをインストールしてみましょう。
すると…
本当にIllustrator CS6がインストールできなくなっていました…。というか、いわゆるIllustrator CC 2017より前のバージョンのIllustrator CCもインストールできなくなっていますね。
これは新しいPCを購入して、以前と同じ環境を作ろうと思ったときに大きな障害です。
Illustrator CC 2017・Illustrator CC 2015.3・InDesign CC 2017・Lightroom 6のインストーラーはまだダウンロードできるようなのでダウンロードしておくと良いでしょう。
今のうちに落としておこう≫「古いバージョンのアプリケーションをダウンロードでお困りの場合、または必要なバージョンが見つからない場合は、以下の表に記載されたダウンロードリンクをご使用ください。」https://t.co/2UnydgVs6d
— 樋口泰行 (@higuchidesign) May 10, 2019
古いバージョンのアプリがインストールできないことの影響は?
古いバージョンのアプリがインストールできなくなって困るのは、特に印刷業界でしょう。DTPの分野です。
そもそも、IllustratorやInDesignは作成時と同じバージョンで開かないと、文字組版がズレたり、表現が異なったりして、制作者の意図とは異なった仕上がりになることもあります。
印刷業界の印刷データは、一度作ると、そのデータを基に修正したり、もしくはそのまま使用したりすることが多くあります。このため、部品データが10年前のEPS形式のファイルであることも珍しくはありません(ロゴデータとか変わらないものは特に)。
こうした事情のため、AdobeアプリのさまざまなバージョンをインストールしたMac・PCを用意することも多いのです。
バージョンが違うとトラブルになる件については以下のページの後半をご覧ください。
Illustrator・Photoshop・InDesignのバージョン番号一覧と下位互換性について|DTPサポート情報
今回の措置がエンタープライズ版にも適用されるようなので、通常のCCのライセンスで複数バージョンをインストールしている印刷会社だけでなく、全日本印刷工業組合連合会の特別ライセンスでインストールしている印刷会社は大きなリスクを抱えることになります。
また、IllustratorやInDesignなどで有料・無料のプラグインや機能拡張を使っている方もいることでしょう。プラグインや機能拡張はバージョンが変わると動作しなくなることもあります。そうした場合に古いバージョンで使いたいのに使えなくなるというのも納得できないのではないでしょうか。
サードパーティ製の有料プラグインがバージョン変わると使えないとかあるから困る
— 宇都宮(テロップ苦手) (@uya_design) May 10, 2019
パッケージ版はどうなるの?
Adobe Creative Suiteのシリーズで販売されていたパッケージ版は今回の問題とは無関係のようです。買い切りタイプのものなので、そうしたライセンスの変更がそもそも難しいということもあるのでしょうが、Illustrator CS4などの古いバージョンをお使いの方はそのまま使えるはずです。
ただ古いバージョンのインストーラーは大事に保管しておいた方が良いようです。
以前存在していたウェブからのインストーラーのダウンロードができなくなっているようです。
シリアル番号をAdobe IDに登録すればインストーラーをダウンロードできるという情報もありますが、いつまでそうした状態が続くかは不透明です。
Twitterの情報からですが、Adobe公式の案内ページがあります。Adobeに購入の情報があればこちらからダウンロードできるようです。(2019/05/10 19:10追記)
うん?こんなんあった? /アドビアプリケーションの古いバージョンのダウンロード https://t.co/KmEpRPxwiy
— モリオ (@moriwaty) May 10, 2019
パッケージ版のインストーラーのダウンロードはカスタマーサポートに連絡することで個別の対応となるようです。(2019/05/10 20:45追記)
永続ライセンス版ではカスタマ・ケアに連絡するとインストーラーのダウンロードリンクが個別に提供されるようです。
「アクティベーションサーバーは使用できません」からの対応(Adobe Community)
余談
なつきさんがこの突然のライセンス提供変更について消費者庁に相談して、あとでブログ記事にまとめるそうなので期待して待ちましょう!(笑)
今から消費者庁にお問い合わせしますが、まとめてブログ記事にしようかなと思っていますー
— なつき@コーディングスクール開催 (@Stocker_jp) May 10, 2019
記事が公開されました。
「CS6以降のアプリがいつでもすべて使える」という売り文句のAdobe CCが、事後報告すらなく過去のアプリが使えなくなった件 | Stocker.jp / diary
あとCreative Cloudの以下の「新しいバージョンが出たらすぐに使えますが、アップデートは強制ではなく、必要な時に行うことができます」という説明も強制ではないけど、Adobeが決めた期限までにアップデートしなさいということになりますね…。
画像出典:Adobe Creative Cloud(Adobe)
関連情報・参考資料
- 非認定バージョンの削除(Adobe)
- 旧バージョンについて(Adobe Community)
- 全印工連「特別ライセンスプログラム"CC"」(全日本印刷工業組合連合会)